元suzakuhogosyaの日記

旧京都市営朱雀乳児保育所の元保護者のブログ

聚楽保護者会からの京都市子ども・子育て会議への要望

聚楽保育所の保護者会から京都市子ども・子育て会議の西岡会長あての要望書が、担当課である児童家庭課に出されました。
以下その全文です。
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2016年4月8日
京都市子ども・子育て会議
会長 西岡 正子 様
京都市子ども・子育て会議
委員各位

〒604-8401
京都市中京区聚楽廻松下町9-4
聚楽保育所
京都市聚楽保育所保護者会


京都市保育所の民間移管に係る
京都市子ども・子育て会議への要望

拝啓
 京都市子ども・子育て会議会長西岡正子様ならびに委員各位におかれましては、平素より子どもたちのためにご尽力いただき感謝いたします。
 さて、京都市が2014(平成26)年10月に策定した『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改定版)』において、京都市聚楽保育所を含む6ヶ所の市営保育所の民間移管(民営化)方針が示されました。京都市聚楽保育所は2018(平成30)年度の民間移管に向けて、2016(平成28)年度より移管先法人等の選定が開始される予定です。
 これに対し、私たち京都市聚楽保育所保護者会は、京都市による市営保育所の民間移管の進め方には以下のような問題点があると考えております。

①『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改定版)』の策定過程について
 京都市は2014年10月に『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改定版)』を策定いたしましたが、これに先だって開催された市の子ども・子育て会議幼児教育・保育部会において、同方針の改定は審議事項とはなっておらず、同部会の委員に対する意見聴取のみが行われました。同部会の委員からは改定案に対し批判的な意見も多数挙げられましたが、それらは同方針の改定に反映されておらず、そもそも審議事項ではないことも委員に伝わっていないという議事のあり方でした。このように、同方針は京都市子ども・子育て会議のどの分科会・どの部会においても責任ある審議がなされないまま改定がなされました。
 しかしながら、このような策定プロセスにも関わらず、この改定版に基づく「市営保育所移管先選定部会」は京都市子ども・子育て会議児童福祉分科会の部会として設置されています。同部会の委員は、西岡正子様が京都市子ども・子育て会議会長として指名される旨を京都市保健福祉局子育て支援部保育課(以下、保育課)より聞き及んでおります。

京都市社会福祉審議会における審議について
 そもそも、この『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針』とは、京都市長より審議を依頼された京都市社会福祉審議会の「福祉施策のあり方検討専門分科会」が2011(平成23)年12月に提出した『市営保育所の今後のあり方について(最終意見)』を踏まえて、2012(平成24)年5月に策定されたものです。しかしながら、この最終意見において「民間保育園への移管」を「選択肢の一つとして検討する必要がある」ことは指摘されているものの、京都市は市営保育所の民間移管方針そのものを社会福祉審議会に諮問したわけではなく、市営保育所の民間移管は同会での審議や了承もないまま京都市の責任で進められている状態です(『京都市社会福祉審議会 会議録』2012年10月30日、16頁)。

③「市営保育所移管先選定部会」の審議事項について
 『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針』に基づいて2012年5月より開始された「京都市保育所移管先選定等委員会」は、京都市の条例ではなく設置要綱のみで設置されたものであったため住民監査請求の対象となり、住民訴訟において京都地裁は、当該委員への報酬は違法な支出であり市長も義務違反をしているとの判断を示しました。この住民訴訟中、京都市は監査委員の意見に基づき、2013(平成25)年11月13日の第1回京都市子ども・子育て会議児童福祉分科会において「京都市保育所移管先選定等委員会」を「市営保育所移管先選定部会」に位置づけ直しました。
 この分科会において配布された資料6「市営保育所移管先選定部会について」には「市営保育所移管先選定部会」の審議内容として「移管先法人の選定に係る事項(傍線引用者)」とのみ記されており、「今後の審議予定」には、その時点で移管先法人の公募が開始されていた船岡乳児保育所の「移管先候補者の選定に係るプレゼンテーション・ヒアリング審査」とその「審査結果の最終決定」とあるように、船岡乳児保育所の移管先法人の選定作業の継続しか確認されていませんでした。
 ところが、『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改定版)』策定後に開催された2015年度「市営保育所移管先選定部会」については、2015年4月24日の広報資料において「市営保育所の民間保育園への移管を実施するに当たって,移管先法人の募集要項,選定基準及び移管先法人の選定等に係る審議を行うために,京都市子ども・子育て会議児童福祉分科会の部会として設置しています(傍線引用者)」との説明がなされています。しかしながら、このような審議事項の追加・変更は、児童福祉分科会では確認されておらず、私たちからの問い合わせに対する保育課の回答も要を得たものではありませんでした。
 このように、「市営保育所移管先選定部会」の設置には明らかな不備があるにも関わらず、保育課は先の「移管先法人の選定に係る事項」にも移管先法人の募集要項や選定基準に係る審議を含むと解釈し、『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針(改定版)』策定後も、市営保育所の民間移管を推し進めています。

④「市営保育所移管先選定部会」の委員指名のあり方について
 2015年度「市営保育所移管先選定部会」においては、移管対象保育所である京都市砂川保育所および京都市林保育所の保護者より出された、移管先法人の選定過程に保護者の参加を求める要望を承けて、「保育園保護者の視点」を入れるため、子ども・子育て会議の市民公募委員が同部会委員に指名されました。しかしながら、同委員は移管対象保育所の保護者からの意見聴取と「移管先法人等募集要項」の作成を終えた段階で任期満了を迎え、この「募集要項」に基づく応募法人の実地審査など、実際の審査と評価・選定にはまた別の市民公募委員が新たに指名されました。
 これについては保護者の指摘と要望により、新委員を迎えた2015年度第5回選定部会の冒頭で急遽、改めて移管対象保育所の保護者からの意見聴取が行われましたが、急なことであったため砂川保育所の保護者会は都合がつかず、意見表明が叶いませんでした。したがって、同じ年度の市営保育所移管先法人等の選定過程において、意見表明の機会が得られた保護者会と得られなかった保護者会という差異が生じることになりました。また、この2015年度第5回選定部会での移管対象保育所の保護者からの意見聴取は傍聴が許可されず、会議録も公開されていません(2015年6月5日に開催された2015年度第2回選定部会で実施された本来の保護者意見聴取は傍聴可能で、会議録も公開されています)。
 このように、2015年度「市営保育所移管先選定部会」は、委員の指名のあり方と選定プロセスの公正さが強く疑われるものであり、私たちはその選定結果にも不信感を持たざるを得ません。

京都市による保育施策の一貫性の欠如について
 2012年5月の『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針』に基づいて実施された市営朱雀乳児保育所および市営室町乳児保育所の民間移管では、その主たる理由として、単独乳児保育所は「就学前までの6年間を見通した保育の実践が困難であり,保育所の機能として一定制約のある」ことが挙げられています(10-11頁)。しかしながら、このような理由の下で乳児保育所の民間移管を実施しながら、一方で京都市は現在、3歳未満児を対象とする小規模保育事業所を、卒所後の「受け皿」を担うべき連携先を確保しないまま数多く認可しています。
 また、すでに民間に移管した旧・室町乳児保育所(現・こぐま白雲北保育園)は、移管先法人が遵守すべき「移管後の運営に係る基本事項」に「移管対象保育所が所在する近隣地域(当該保育所から半径3km以内)の乳児定員枠の維持に努めること」とありますが、2016年度より0〜5歳児保育を開始するにあたり、乳児(0〜2歳)の定員が従来の60名から41名に減少しました。
 さらに、船岡乳児保育所は移管先法人等の募集にあたっては、その募集要項において定員を60名としながら「定員30名を下限として,移管先法人等からの提案を認める」とも記載しており、実質的に受け入れ上限人数の半減を可能にしました。それでも船岡乳児保育所の移管先は決まらず2015年度に民間移管を断念する一方、京都市は2016年度より同乳児保育所の定員を30名にして京都市楽只保育所の分園とすることを決定しています。
 京都市は2017(平成29)年度末までに市内において保育所2,236名分、小規模保育事業所839名分の整備が必要になると推計しています(ともに4月1日時点)。船岡乳児保育所のある京都市北区「柊野、大宮、上賀茂、元町、紫竹、紫明」では35名分の小規模保育事業所の確保が必要とのことですが、一方で市営保育所の民営化をめぐるこの間の京都市の対応は、施策としての一貫性に欠けるものであり、京都市の保育をめぐる現状に対し矛盾あるいは逆行するものと言わざるを得ません。

⑥保育施策実施状況の調査・検証・審議について
 2012年5月の『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針』2頁には「本方針の射程期間については,平成24年度からの5年間とし,29年度以降については,5年間の取組状況の検証を含めて,改めて見直しを行うものとします」と明記されています。また、2012年8月29日の第5回「京都市保育所移管先選定等委員会」では事務局より「そもそも今回の民間保育園への移管をするのは約5年スパンということで,もう一度,社会福祉審議会で検証をお願いすることになると思いますが〔中略〕移管を,いわゆる「やりっぱなし」にするということは好ましくないのは当然のことと思っております」との発言があったことも記録されています(『第5回京都市保育所移管先選定等委員会摘録』4頁)。
 ところが、これらが明言されているにも関わらず、未だ、これまでの市営保育所の民間移管について何らの検証もなされていません。私たちは、個々の移管対象保育所の子どもたちへの影響をはじめ、『市営保育所の今後のあり方に関する基本方針』について、施策の実施状況に関する調査・検証・審議がなされないまま、さらなる市営保育所の民間移管が進められるべきではないと考えています。
 市営保育所の今後のあり方に関する事項そのものが、京都市社会福祉審議会から京都市子ども・子育て会議に移行しているのであれば、いわゆる地方版子ども・子育て会議の役割を定めた「子ども・子育て支援法」第77条の「当該市町村における子ども・子育て支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関し必要な事項及び当該施策の実施状況を調査審議すること」に則り、京都市子ども・子育て会議においてこそ、施策の実施状況に関する調査・検証・審議がなされるべきではないでしょうか。

 以上のように、京都市による市営保育所の民間移管に係る方針や施策の手続き、合意形成、実施状況等は総じて杜撰であり、私たち聚楽保育所保護者会は京都市による市営保育所の民間移管には数々の重大な瑕疵あるいは不備があると考えています。そこで私たちは2015年8月より「京都市聚楽保育所の存続を求める署名」(別紙1)を募り、保護者をはじめ、地域の方や元保護者の方より5,057筆の署名をお寄せいただきました。また、京都市議会に提出した「聚楽保育所の民間移管に係る改善」の陳情書(別紙2)も受理されており、近日中に京都市議会教育福祉委員会に付託の上、審議される予定です。これらはいずれも京都市に対し「保護者への説明と合意形成に向けた話し合い」を求めています。

 これを承けて、京都市子ども・子育て会議会長の西岡正子様ならびに委員各位には以下を強く要望いたします。

1. 京都市子ども・子育て会議において上記①〜⑥の問題点を確認し、その解決に向けた調査・検証・審議を実施すること。

2. 京都市より聚楽保育所の保護者に対し、十分な説明と合意形成に向けた話し合いがなされるまで、「市営保育所移管先選定部会」の委員指名と同部会の設置・開催を留保・延期すること。

 ご検討の程、よろしくお願い申し上げます。
敬具