元suzakuhogosyaの日記

旧京都市営朱雀乳児保育所の元保護者のブログ

保育システム研究所・吉田正幸代表 公立位置付け明確に(毎日新聞2015/4/21)

育みは今:保育所民営化・紙上討論/上 保育システム研究所・吉田正幸代表 公立位置付け明確に /京都
毎日新聞 2015年04月21日 地方版
http://mainichi.jp/…/kyo…/news/20150421ddlk26100451000c.html

 ◇全体像を描くことから
 京都市が2014年度から計11カ所の市営保育所を民営化する計画を進めている。今年4月に国の「子ども・子育て支援新制度」が始まり、保育の運営主体や事業形態が多様化する中、自治体は公立保育所をどのように位置付けていくのか。また、差し迫った課題とされる待機児童解消のため、公立保育所の民営化は本当に避けられないのか。民営化にあたり保育の質を維持するにはどうすればいいのか。保育政策の専門家に2回にわたり聞いた。

 市営保育所の民営化計画自体に焦点が合いがちだが、どのような京都市の保育を目指すのか、まず全体像を整理することが先だと思う。その上で民営化が必要かどうか検討すべきだが、その流れがない。
 公立でも民間でも保育の質や基準は同じであるべきで、公立か民間かという問題は、本質的なものではない。
 一方で保育所の整備や運営には税金を使う。税の公平性を考えると、公立が必要以上に高コストであれば、一定程度は効率化しなければならない。効率化できるのなら民営化は必要ない。コストと同等かそれ以上のサービスが充実していれば説明がつく。障害児保育はその最たるもの。手厚い職員配置が必要で相当コストがかかる。そこは公・民関係なく当然きちんと財源をつけるべきで、コスト論で割り切ってはいけない。
 4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」でいろいろな事業主体が参入してくる。そこを踏まえて行政が公立をどう位置付けるのか。その議論が京都市に限らず全国的に抜けている。公立の職員は公務員であり、在園児に限らず子育て家庭に支援の目配りをしていくことが重要な観点。採算が取りにくい話だからこそ公立がやらないといけない。
 民営化の大前提は、保育の質や経営のみならず、職員の処遇や配置などもより良くなることだ。そこを明確にしなければいけない。移管先を選定する際、保育の質に関する判断基準を持ち、その基準に従い厳格に審査することも重要だ。
 京都市では保育所の9割が民間で、公立は1割に満たず全国的に見て少ない。公立の方が1カ所あたりの年間の運営費が約4000万円高いとして、10カ所減らしても約4億円の削減。市の財政を考えるとそんなに大きい額でもない。民営化した場合、残った公立は地域の拠点にして、予算も重点配分すべきだ。そうすると実はそんなに財政削減にはならない。
 待機児童解消のために民営化は欠かせないかと聞かれれば、大きなところでは関係ないとは思う。ただ、受け入れ人数を増やすには、公立よりも民間を増やした方が財政負担が軽く、無視できない要素だ。あと5〜6年で子どもの数が減少し、不要な保育施設を閉鎖しなければいけなくなった時、公立を閉めるのは大変な労力が要る。自治体がソフトランディングの戦略として民間を増やすことはありえる。【聞き手・野口由紀】
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 ◇ご意見体験談募集
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 ■人物略歴
 ◇よしだ・まさゆき
 1957年生まれ、福岡市出身。大阪大人間科学部卒。教育専門誌の記者を経て、子育て支援政策のシンクタンク「保育システム研究所」(東京都港区)代表。厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会委員など歴任。京都市のほか、千葉県浦安市、東京都品川区など複数の自治体の子ども・子育て会議の委員を務めている。