元suzakuhogosyaの日記

旧京都市営朱雀乳児保育所の元保護者のブログ

20131214学習会「安けりゃいいのか?〜市営保育所の民営化(民間移管)から考える保育のいま〜」のレジメ

20131214学習会「安けりゃいいのか?〜市営保育所の民営化(民間移管)から考える保育のいま〜」のレジメ

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京都市は、来年4月の朱雀・室町の2市営乳児保育所の民間移管を決め、2015年4月に九条・吉祥院の2市営保育所の移管を準備中。船岡乳児保育所は2年連続で申請取り下げなど応募がなく、来年度も公募を継続。

1)2010/8/21「市営保育所の今後のあり方(検討資料)」
「民間と市営における実践との間に大きな差が見られないことなどから、現状の保育サービスの大部分は民間において提供できる」「民間と比べて高コストとなる市営については、民間への移管も」「厳しい財政状況の下、最小の費用で最大の効果を得る視点に立って、 現状の保育サービスの提供を見直す」「公務員としての保育士」「市営保育所で働く職員の状況(年齢構成等)と人事異動」
→2010/10/22 「厳しい財政状況のもと、公費負担の公平性の観点から、民間では保護者負担である(昼寝用ふとん・布おむつ)を見直し」、布おむつの提供を廃止。 →作業員さんの人件費削減

2)2010/10/28市長が審議を依頼した京都市社会福祉審議会 福祉施策のあり方検討専門分科会「市営保育所の今後のあり方について(最終意見)」
14回の審議で一度も保護者の意見を表明の機会がなかったが(保護者を代表する団体がないという理屈)、代わりに実施されたアンケートではほとんどが民営化反対で現状の市営保育を高く評価され、「現在の保育の質の継続を保障するため,特に,第三者評価の定期的な受審を義務付けるなど,京都市による,移管後における継続的かつ定期的なチェックが必要」「移管に当たっては,入所する児童への影響を何より考慮するとともに,その保護者等の意見をできる限り尊重する必要がある」との意見がつく。
審議会では「市営保育所は各区に一つ、そこに障害児・被虐待児・貧困層の児童を集める」「ベテランの職員だからといって能力があるとは限らない」といった発言があったという。なお、官民とも保育士の3割が非正規。

3)「基本方針案」パブコメ(応募件数366件)の7割反対・慎重意見。→京都市は無視。
2012/5/10「市営保育所の今後のあり方に関する基本方針」
市が財政難なので、保育所の運営費を削減するために、保育士の平均勤続年数がより短く人件費が安い民間保育園に運営を移管するというもの(保育士の賃金体系は同じなので)。浮いた財源で被虐待児などの特別支援に特化した保育をおこなうことが市営保育所の今後のあり方と位置づける。「移管先法人の選定を行う際には,移管対象保育所に入所する保護者の意向も十分に踏まえることとします」とも。

4)「市営保育所移管先選定等委員会」が、保護者の意見を聴取し、移管対象保育所や募集要項・選考基準などを審議・選定。昨年度第4回選定委員会で、「移管しないで」という保護者意見は無視され、一言の審議もせずに朱雀他3園が移管の対象に選定される。昨年度第5回委員会で「実は選定委員会に選定の権限はない」ということを「確認」。選定委員会設置要綱の第2条には、「委員会は,民間保育園への移管対象とする市営保育所及び移管先法人の選定に関し,次の各号に掲げる事項を審議する。(1)移管対象とする市営保育所の選定に係る事項」とあるので、完全に後出しジャンケン。選定理由の公表もされず。
昨年度第8回選定等委員会では、京都市は、保護者の意向は「主観的」であり、「行政としての公平性を考えたときにバランスを欠ける」からと、移管先の審査基準からもはずされる。

5)そもそも選定等委員会は市の附属機関に該当(市職員以外の参加、調停・審査・審議・調査を行う、合議体として一定の結論を出す機関)するが条例に基づかずに設置されたので、委員への報酬は違法と住民訴訟に。

6)市長が選定した朱雀・室町の2乳児保育所の移管先法人は、選定等委員会の審査では「保育内容」が24点中15点と11点と低く、乳児保育所の移管先であるにもかかわらず0歳児保育をおこなっていない園や、選定委員から「移管先にはふさわしくない」という意見が付された。現状の保育の質の継続を求める保護者の意向は全く踏まえられなかった。また、移管先が決まる前から入所していても、転園の希望には制限があり、場合によっては優先順位を下げられるということもおこっている。今年度第2回選定等委員会で、保護者が「審査結果の合格点」の設置を求めたところ、京都市は、「応募される法人が現に認可保育園を運営されているという中にあっては、総合的な評価が著しく悪いというところは基本的にはないと考えています」と拒否される。

7)2年続けて辞退などで応募がなかった船岡乳児保育所について、京都市は、「応募してきた移管先法人には3歳からの受け入れ枠を作ることが困難であるとして辞退された」ので、乳児60定員のまま受け入れ児童数を減らすことを検討、「移管の要件を低くしたい」と発言(12/4の市議会・教育福祉委員会)。待機児童解消と言いながら、一方では民間移管をすすめるために、受け入れ児童数を減らすという矛盾。船岡を希望しても、定数内であっても入所を断るのか?京都市は、船岡で減らしても楽只で増やせば問題ないとも。船岡の移管撤回はありうるかも。

8)3乳児保育所の移管によって削減が見込める経費は年間1,2億円程度とのことで、一般財源に占める割合で0.03%の低下にしかならないが、京都市保育課は、「お言葉ですが,パーセントではないと思います。私どもは,毎年,子ども達を受け入れるために必ずその分の負担をしなければならないということでは,毎年1億円,2億円をどうやって生み出すか,ということで頭がいっぱいでございます。たしかに委員が言われるように,数%ではありますが,その1億円,2億円が本当に大変なのです」(第4回委員会摘録31p)。しかし、今年7月26日発表の2012年度の決算では、全会計の累計収支は約170億円の黒字で、11年度の黒字(約85億円)から倍増している。それでも民間移管をしなければならないほど保育士の人件費が財政を圧迫しているといえるのか。

9)平均勤続年数の短さをめぐって
保育所・保育園は歴史的にいわゆる「女性の社会進出の進展」を支えてきたと言われる。そして保育士のほとんどが女性。多くの保育士が勤続10年ほどでやめていくような職場環境であり続けていいのか。民間移管は、民間保育園が「市営より早く女性がやめていく職場」であることを積極的に利用したものである。これは京都市男女共同参画計画 基本目標2「男女が共に安心して働き続けられる環境づくり」で課題だとしていたM字カーブ問題の解消とはまるで正反対。M字カーブとは、産休や育休などの制度が整っていないために、仕事をやめざるを得ない女性が6割にのぼるという統計のこと。京都市は女性が働き続けられないような労働環境を改善するのではなく、むしろそれをコストの面から良いことだといっている。こんな差別的なことが許されるのか。京都市は、民間保育園の若い保育士さんの労働に対して、正当な対価と労働環境の改善で応えるべき。保育所民営化は搾取の一種。

→ 【参考】京都市民間保育所保育士等処遇改善臨時特例事業補助金支給要綱 (趣旨) 第1条 この要綱は,待機児童解消のための保育士等人材確保対策の推進を目的として民間保育所が,保育士等の処遇改善を図るために要する費用に対する補助金の交付に関し,京都市補助金等の交付等に関する条例及び京都市補助金等の交付に関する条例施行規則に定めるもののほか,必要な事項を定める。

★朱雀の移管先に上の子が通う保護者の声 「3歳までは朱雀がいい。方針が違うから引き継ぎは難しいと思う」


【参考資料】
2012年10月30日、京都市社会福祉審議会で、事務方である京都市保健福祉局から「市営保育所の今後のあり方」が報告された。何のことはない現在、淡々と進められている市内3ヶ所の市営保育所の民間移管の事後報告だった。
私は、この問題に対して見過ごすわけにいかないと思い「こんな重要な問題が何故、社会福祉審議会の了承もなく進められるのか?」と勇気を奮って質問した。
それに対して、久保保健福祉部長は「これは、社会福祉審議会に諮問した内容ではなく、京都市の責任で進めているものである。今後は、社会福祉審議会にも報告していく」と回答。ようするに、今回の市営保育所の民間委託は京都市の主導(門川市長の肝いり)で進められていることが明らかになった。
(全国福祉保育労働組合 京都地方本部ブログhttp://fukuho-kyoto.blogspot.jp/2012/10/blog-post_31.htmlより)

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京都新聞(2013/2/7付)「窓」欄に載った投書「保育所民営化の再考を」

 私は京都市朱雀乳児保育所の保護者です。京都市は、現在、財政難を理由に、朱雀乳児保育所など5カ所の市営保育所を1〜2年で民営化(民間移管)するという方針で性急に話を進めていますが、私たち保護者は合意も納得もしていません。
 保護者への説明会では、市営保育所の保育士さんより民間保育園の保育士さんのほうが平均して若く人件費が安いから民営化するのだという説明がありました。まるで保育士さんは長く働き続けてはいけないかのような言い方でした。行政には保育士さんが長く働くことができる環境を整備する責任があるはずで、おかしいと思います。
 また、民営化しても、削減が見込める経費は年間1.2億円であり、例えば1日に4.8億円の税金を使うようなイベントに比べて、市の財政を圧迫しているとは思えません。
 京都市は、民営化で削減した経費を具体的に何に使うのかも明らかにしておらず、「安上がりの保育」をめざしているのではないかと不安です。
 保育の理念や方針がちがう民間保育園への運営の引き継ぎは、乳幼児期の子どもたちの心身に大きな影響があるといいます。性急な民営化をぜひ考え直してほしいと思います。